1月20日 隣人トラブル

筆界確定

 A男は、最近妻を亡くした。妻は人当たりが柔らかく、隣地の頑固な老爺ともうまく付き合っていたが、妻が亡くなると、その隣人は、A男にいろいろ文句をつけてくるようになった。「お宅のけやきの木の葉がうちの庭にも落ちて来る。木を切れ」とか、「車のエンジンを吹かす音がうるさい。車を売ってしまえ」とか、「犬の鳴き声がうるさい。犬を捨ててしまえ」とか、理不尽なことばかりだ。A男はもともと人付き合いが良い方ではなく、無視していたところ、隣人は、A男との土地の境界杭を勝手に掘り起こし、新たにA男の土地内の30センチ食い込んだ位置に、勝手に杭を打ち込んでしまった。今までは何も言わずにいたA男も、これには我慢がならず私のところに相談に来た。

 A男の土地の範囲をはっきりさせることが必要だが、とても示談などできる相手ではない。

 あまり一般には知られていないが、筆界確定制度というのがある。「筆界」とは、土地が登記された際に、その土地の範囲を区画するものとして定められた線のことで、これが曖昧な場合は、土地の所有者が筆界確定の申請をして、筆界確定登記官が調査、測量、資料を収集して筆界特定してこれを公示する、というものであるが、筆界を特定するには、関係者の意見を聴取することが必要である。  この制度を利用することも考えたが、A男が自分の土地の測量図を作成した際に、隣人は土地家屋調査士にいろいろ嫌がらせをして作業を妨害したりしたので、この際きちんと裁判所に判決を出してもらった方が良いと考え、所有権確認、及び勝手に境界杭を移動した不法行為責任も問うて、訴えを出すことに決めたのだった。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。