見栄は不要
A子はこれまでいろいろな法律問題を私に相談してきた。親が亡くなった時の遺産分割協議書の書き方、わが子が友人にケガをさせてしまった時の賠償金の支払い、通販で購入した品物を返品する時のトラブル、隣家の犬が自宅の庭に入り込んで植物を荒らし回った時の損害金の請求等々。ときには相談ではなく近くまで来たから、と土産にケーキを持って来て無駄話をしていくこともあった。
そのA子が自己破産せざるを得なくなり、他の弁護士に依頼したが一年近く経つのにまだ申立てもしてもらえない。いろいろ書類を提出させられ、今後の見通しについて質問しても説明がよくわからない、ということで私の事務所に来た。自己破産の申立事件を何故私に依頼しなかったの?これまでいろいろ相談にのってきたでしょ?と心外な気持ちを言うと「だって、破産事件を頼んだりするのが恥ずかしかったから」という。それで他の弁護士に依頼したが、やはり私からいろいろ教えてもらいたくなってやって来たのだ。
まず、弁護士に対して「恥ずかしい」という気持ちを持たないこと、自分の恥とするようなことでも洗いざらい話してこそ解決の道が開けるのだ。そして自己破産することは決して恥ずかしいことではないのだ。借金を抱えてどうすることもできず逃げ回ったり、払えないのにまた新たな借金を抱えてどうにもならなくなったり、親戚に嘘をついて生活を助けてもらったり、ということは恥かもしれないが、きちんと資料を揃えて自己破産の申立てをし、免責(これまでの借金を払わなくても済む)決定を裁判所から取れれば、それは立派な解決方法なのである。変な見栄をはらないこと。
弁護士藤田紀子は2023年3月12日に満77歳で急逝いたしましたが、生前に執筆していた原稿を掲載しております。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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