4月10日 婚族関係を消滅させる
A子は結婚以来ずっと姑にいじめられ続けてきた。姑は夫に死なれて、女手ひとつで息子を育てあげた。その大事な息子を嫁に取られたという意識で、何事につけ、A子に辛く当たる。夫も母親に頭が上がらず、同居してまず第一に母親の意向を聞き、母親を大事にして、A子には何事も我慢を強いる。そんな夫に忍耐の緒が切れ、離婚調停を申し立てた。夫は別れたくない、かといって姑とは別居したいというA子の希望も聞き入れず、調停不調でA子は本訴を提起した。
ところが、夫がポックリくも膜下出血で死亡してしまった。当然夫婦関係は消滅する。訴も取り下げた。A子は悔しがる。夫よりもむしろ姑との間の関係を断ち切りたかったのだ。生き残った妻と夫の血族との間の婚族関係はこのままだと消滅しない。そこで私はA子に「婚族関係を消滅させる意思表示」というものがあることを教えた。民法第七二八条二項という規定である。戸籍法九六条に届出の方法が規定されている。この規定は、姑のほうからA子に対しての婚族関係終了の意思表示は認められていない。すなわち婚族関係を存続させるかどうかをもっぱら生存配偶者の判断にまかせたのである。A子のような気持ちの嫁の立場を慮った規定と思われる。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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