3月10日 夫の愛人

 A子は夫に愛人がいることを知った。バレたからには離婚してくれという夫の申し入れを拒否し、愛人M子に慰藉料請求の裁判を起こした。出廷したM子を見て驚いた。髪も洋服もボサボサ、生活にやつれきった様子だ。聞くと夫と死別し、二人の幼子を抱えて生活保護を受けているという。A子の夫の勤務するビルの清掃員をしていて、A子の夫との不貞関係は認めているが、まったく支払能力はない。正直A子の夫はこの女性のどこに魅力を感じたのかわからない。もしかしたらM子は見かけによらず優しい女性だったのかもしれない。A子は綺麗で品も知性も感じられるのに、何を好き好んでこんな女性と・・・と納得いかない思いである。

 B子は、夫から好きな人ができた、晩年はその女性と一緒に暮らしたいから離婚してくれと言われ、青天の霹靂。聞くとその女性は一級建築士で、これまでずっと独身。市内に設計事務所を構えて使用人も数人おり、経済的にも安定している。写真を見せられたが相当の美人で着る物のセンスも良い。B子は自分は悪いことを何もしていないのに離婚なんてとんでもないと拒否し、愛人のN子に慰藉料1000万を払えという手紙を出した。そうしたところ、N子に代理人弁護士がついて、不貞の事実は認め、1000万は払えないが500万円なら支払う用意があると言ってきた。さらにN子自身の謝罪文も同封されていて、「道に外れたことして申し訳ない」という内容の達筆には感心させられた。まさに脱帽という感じだ。

 さて、ふたつの事件に関わって、自分は考え込んでしまった。仮に、夫に愛人ができたとして、その愛人が「何で?夫の気が知れない」というような女性だった場合と、とても及びもつかないような高みにいる女性だった場合と、どちらが許せるか、いや、どちらも許せないか。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。