7月10日(2021年7月10日)
A夫は建築業者に、庭の一角にガレージの建築を頼んだ。出来上がったガレージは見た目は立派だったが、使ってみると色々不具合があった。まず、シャッターがきちんと閉まらない、レールにゆがみがあるようだ。それから雨漏りがする、屋根の素材に問題があるようだ。床が平ではない、テニスボールを置いたらころころと奥のほうに転がって行った。
これらの不具合を業者に修補してもらおうと交渉したがらちがあかないので、私は依頼を受けて瑕疵(欠陥)を修補せよという訴えを起こした。しかしその後A夫は気持ちが変わって、ダメな業者に修理を頼んでもまたダメな修理しかしないかもしれない。それよりは別の業者に頼んでその費用を払ってもらおうと考えた。そこで私は主張を変更して、別の業者から見積もりを取ってその費用を請求することにした。民法の規定では、仕事の目的物に瑕疵(欠陥)がある場合には、瑕疵の修補請求することも、修補に代わる損害賠償を請求することも、どちらでもできることになっている。
ところがA夫はまた考えを変えて、やはり色々わかっているこの業者に頼んだほうが良いと言うようになった。しかたないから私はまた主張を変える書面を出したところ、裁判官に「一体どっちなんですか」と私が怒られてしまった。悪いのは私ではないのに、と思いながら、いやいや依頼者をきちんと説得できないのはやはり私が悪いのかな、と反省もする。
B夫もなかなか快心のつかない男だ。妻から離婚の請求をされ、今別れてくれるなら財産分与も慰藉料も請求しないと言われ、それはB夫にとって経済的メリットがあるので妻の要求に応じるつもりでいた。では妻にそのように返事しますよと私が言うと、いや、もう一週間待ってくれと言う。一週間後、どう考えても私に落ち度はないのでやはり離婚には応じられないと言う。では妻にそのように返事しますよ、そうすると妻のほうは離婚調停の申立をするでしょうねと私が言うと、また、やはり考え直すからもう一週間待ってくれと言う。私が一週間待つのはいいが、妻のほうが方向性が立たず困るだろう、しかしA夫の場合と違って離婚に応じるか否かは人生の大問題だから迷いに迷うのも無理もなかろうか。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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