7月10日 (2020-7-10)
この時期、皆マスクをしている。夏で気温が上がった今でもマスクをして外出する。裁判所も再開したが、法廷でも部屋でも裁判官も書記官も当事者も皆マスク。
ところが先日、東京地裁の裁判員裁判の法廷で弁護人が「マスクをしていたのでは全力で弁護できない、弁護人の口元、全表情を裁判員に見てもらいたい」とマスクの着用を拒否したという記事を目にした。
確かに弁護士の法廷での演技力も必要かもしれない。私が昔、事件を共同でやっていた老弁護士のやり方を見てそう思ったことがある。依頼者と打合せしていたときに依頼者が一枚の紙を取り出した。相手方が書いた念書らしきものである。それはこちらの有利になる証拠だったので私は当然それを事前に証拠として裁判所に提出すべきと考えたが、老弁護士はそれを証人尋問当日に持って来るように言ったのだ。法廷での尋問当日、依頼者が尋問の席で「こんなものがあるのですが」と念書を取り出した。老弁護士は「どれどれ」と初めて見るような顔でそれを見て、さもびっくりしたように「裁判長、これは動かぬ証拠です。是非採用してほしい」と裁判官にアピールした。
なるほどこうやって証拠価値を高める方法があるのかと新米の私は勉強したのである。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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