3月10日 (2012-3-10)

 母親が連れ子をして再婚する場合、新しい夫が連れ子をいじめるケースはよくある。
 中学三年生のA君も、毎日のように母親の再婚相手Bから小突かれたり、叩かれたりして、耐えられず、学校の先生と児童相談所に行き、育児院に預けられることになった。
 Bは逮捕され、暴行・傷害の前科もあることから今回起訴されたが、Bは、A君に暴力を振るったことはないと否認している。母親も、検察官の調べに対し、Bの暴力を否定しているばかりではなく、我が子であるA君を「しょっちゅう嘘をついている」と言って、Bをかばっている。そこで、裁判官が、直接A君を尋問することになったが、A君は裁判所に行きたくない、義父であるBの前で証言するなど恐ろしくてできないと半泣き状態だという。
 育児院から「どうしましょう」との相談をうけて、私は、「やはり、A君の尋問はしてもらった方がよいでしょう。ただし、場所は、裁判所ではなく育児院で」、また、「義父Bの弁護人は当然同席するが、Bには席を外してもらう」という提案を勧めた。
 そして、この提案が受け入れられ、A君も納得して証言することになったという。ひとまず安心したが、母親は、我が子よりも、再婚相手の方が大事なのかと情けなくなった。
 もっとも、A君の母親には、Bとの間に生まれたばかりの子どもがおり、Bには生計維持のため、今後も働いてもらわなければならないという現状を考えると、母親の心境も、さぞ複雑なのだろうと思いやられるが。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。