12月10日 (2012-12-10)

 A子が、B夫と結婚した時には、既に2匹の犬がいた。
 もともとは、B夫が犬の世話をしていたが、朝の散歩や餌やり、具合の悪い時に獣医に連れて行ったり、だんだんA子が犬の面倒をほとんどみるようになると、A子は、2匹の犬が可愛くてたまらなくなった。
 B夫の父親が亡くなり、一人になったB夫の母親を引き取って同居することになった。これがたいへんな人で、いちいちA子のすること為すことを非難する。A子の持ち物検査をしたり、A子が外出する際、行き先を詮索したりする。
 A子は耐えられなくなり、B夫と話し合って、しばらく別居することにした。A子は、2匹の犬は、もともとB夫が飼っていた犬だったので、犬を置いて出ようと思ったが、B夫は、犬を処分するというので、可哀相に思い、A子は2匹の犬を連れて家を出た。
 別居後、B夫は、生活費を払ってくれないので、A子は、B夫に対し、婚姻費用分担調停申立をした。B夫の収入を基に、裁判所の基準で算定すると、A子の生活費は、月額12万円になる。A子は、自分の生活費だけなら月額12万円で何とかやっていけるが、2匹の犬に1ヶ月4万円かかるので、その分上乗せして欲しいと主張した。
 しかし、B夫は、これを拒否、裁判所も犬の費用までは認められないと言われ、仕方なく12万円で合意した。
 以前同じような一件があった。
 C子は、乳児を置いて女房に出て行かれたD男に同情して同居し、乳児の面倒をみるうち、すっかりなつかれ、D男と婚姻届出して、大事に子どもを育てた。
 その子が15才になり、C子を本当の母親と思って良い関係が築かれた頃、D男の酒乱が始まり、C子はとても一緒にいられないと考え、離婚を申し出たところ、離婚したくないD男は、「おまえが本当の母親でないことを、子どもにバラすぞ」と脅迫した。子どもも、「お母さん、出て行かないで」と涙ながらに頼むので、結局C子は、それから5年我慢した。
 そして、子どもが成人した時、もう我慢できないと、私の事務所に離婚調停申立を依頼に来たが、「やっと子どもに本当のことを話す決心がつきました」と言っていた。
 心優しい者が、つらい思いをする世の中だ。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。