2月10日 (2011-2-10)

A子が万引きをして初めて逮捕されたのは、もう五年も前のことである。
一人息子が大学受験に失敗した時だ。合格したら、ネクタイをお祝いに買ってあげようと思っていた。そう考えながらデパートを歩いている時、知らず知らずのうちにネクタイを盗ってカバンに入れ、警備員に捕まったのだった。しかし、その時は、A子は起訴猶予で済んだ。
その二・三年後、息子が失恋で悩んでいた冬、暖かいマフラーでも買って慰めてあげようと思いながら、またデパートでマフラーを万引きしてしまったのだ。この時は起訴されたが、執行猶予の判決だった。
去年の暮、息子は自殺した。原因が何か分からない。A子は、スーパーで男性用化粧品を手当たり次第紙袋に入れ、代金を払わずに店を出たところを警備員に捕まり、警察につき出された。
今度こそ実刑になるかもしれないと考えたA子は、これまで、その度に弁護人になってきた私に、預金通帳と印鑑を預かってくれと言ってきた。夫を信頼しておらず、自分が刑務所に入っている間に勝手に預金を使われるのを心配しているのだ。
その預金通帳を見て驚いた。残額は二〇〇〇万円近く。
これまでも、A子はお金に困った生活をしていた訳ではない。親からの遺産がたくさんあって、万引きした時もいつも財布に数万円は入っていたのだ。そして、万引きした物はたかだか数千円。
A子の万引きは病気だろうか。精神科の医師に話を聞いてみたいと思っている。そして、リウマチで日常生活につらい思いをしているA子のために、何とか罰金刑にしてほしいと弁護するつもりだ。
それまで、懲役刑だけだった窃盗罪に、罰金刑が平成一八年以降導入されたので。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

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