1月10日 (2011-1-10)

 A男は、所持金がなく、ひもじさの余りコンビニでおにぎり一個を盗ってポケットに入れたところ、警備員に見つかって警察に突き出された。
 盗ったおにぎりは、すぐ返してコンビニに被害はなかったものの、起訴されて懲役一年の実刑の判決が言い渡された。本人は、不服で控訴し、私が国選弁護人になった。
 A男には前科があり、懲役三年執行猶予五年で現在執行猶予中であるため、今回は、執行猶予が取り消されて合計四年間も刑務所に行かねばならない。
 A男は、今回のおにぎり一個の窃盗なんて不起訴でもいいのに、せめて罰金刑なら執行猶予は取り消しにならないのに、と不服で控訴したのだ。
 A男の気持ちが分からないでもない。しかも、所持金がなくて、ひもじさの余りおにぎりを盗ったということに同情も禁じ得ない。しかし、記録を読んでみると、A男は、リウマチの持病があり、働けないので生活保護を受けている。生活保護で支給された金を、ほとんどパチンコと競馬につぎ込んで無一文になったのであった。A男の前科というのは強盗致傷で、前回やはりコンビニで物を盗ろうとして店員に見とがめられ、押し倒して逃げた。その時、店員が大ケガをしたという事件であった。そんな重大な罪を犯していながら、せっかく執行猶予になったのだから、少なくともその期間中は、法令遵守に努めなければならないのに、ギャンブルの誘惑に負け、また前と同じようにコンビニで物を盗ろうなんて許せないと警察・検察でも考え、起訴したのであろう。
 面会に行くと、A男は、開口一番「こんな所にいるのはもう嫌になった。リウマチもひどくなってしんどい。早く保釈の手続きを取って、出してほしい」と言う。私が、「保釈保証金を出してくれる身内とか友人とかいるの?」と聞くと、父親とか友人とか何人かの名前をあげ、連絡先も教えられたので、片端から電話をしてみたが、誰もA男のために力になってやろうという人はいない。また、面会してA男にそれを告げても、「もう一度電話して頼んでみてほしい、自分は、今保釈のことしか考えられない」と言う。
 世の中を甘く見すぎている。こんな人に更正の道はあるのだろうか。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

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