婚約破棄の法律問題 (2006-4-5)

 よく結婚式に招待されたり、仲人を勤めたりすることがあるが、結ばれた2人の表情は明るく、希望に満ちて輝き、真にホーホツァイト(ドイツ語で最高の時=結婚式)だなあと思う。
 しかし世の中には、婚約はしたものの不幸にして結婚に至らなかったカップルがたくさんいる。2人の合意で解約する場合は問題は少ないが、法律的に厄介な問題を残すのは、一方的な婚約破棄の場合である。
 まず、婚約が成立していたか否かが争われることが多い。結納や指輪の授受があった時ははっきりしているが、2人の口約束だけの場合は、後での立証がむづかしい。
 次に破棄した者の責任であるが、強制履行を求めることは許されない。結婚は当事者の自由な意思で成立させるべきであって、たとえ婚約者でも、すでに結婚する意思がなくなった者に結婚を強制すべきでないからである。
しかし、正当な理由がないのに婚約破棄した者は相手方に損害金や慰藉料を支払わなければならない。
何が正当な理由になるかはむづかしい問題であるが、相手方に莫大な借金があることとか、交際中の異性がいることなどわかって、とても円満な夫婦生活を望めない場合などは正当な理由ありと言えるであろう。
婚姻後の夫婦の姓をどちらにするか話し合いがつかなくて破談になったケースも時々耳にするが、民法改正で夫婦別姓が認められるようになれば、少なくともこの点でのトラブルは避けられることになるであろう。
損害金としては、結婚式場の予約金や嫁入道具購入の手付金などが考えられる。
慰藉料の額については一口に言えないが、離婚の慰藉料と比べてずっと低いのが現状である。
 結納は将来成立すべき結婚生活を目的とする贈与であるから、結婚が不成立に終った時は原則として返還請求できる。
しかし、結納を出した側が不当に婚約破棄した場合には、それをそのまま損害金や慰藉料に充当させて返還を請求しない、というケースが多い。
 先日も1つ和解で解決したケースがあったが、見合した相手と交際を続け、結納も済ませて式場予約、親せきや知人に招待状の発送、衣裳合わせと進めていったのに、だんだん相手の男性の態度が冷たくなり、仲人を通して破棄の申入れがあったが、何が原因なのか全く説明も無かった、というケース。
親せきや友人から送られた祝の品を前に悲嘆に暮れていたが、相手のわがままが許せず意を決して訴訟にしたのであった。
結局結納金の100万円に若干プラスした金額の支払を受けることで和解したが、依頼者の女性は未だなかなか諦め切れないようであった。
私は
 「一緒になってからこじれて離婚するより、早い内に破談になって再出発できるのだから、
  むしろよかったとおもわなくちゃ」
となぐさめたのであったが、年頃の娘を持つ親でもある私としても複雑な気持であった。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。