夫のある夫人が「結婚詐欺に ... (2006-2-28)

 恋愛に年齢はないというけれど……。
先日、私の事務所に訪れて来たのは、初老の美しい夫人A子。
歳を聞くと、64歳とのことだった。
 A子が、「詐欺にあったから訴えたい」と言うので、てっきりお金か何かを取られたのかと思ったら、そうではない。
結婚詐欺だという。
 付き合っていた55歳の男性B男と近いうちに結婚する約束だったが、その彼から、
「あなたみたいな人が、国分町に店を持ったらはやる」
と言われ、彼が借りたバーで、いわば雇われママさんとして働いた。
常連客もできて、まあまあの経済状態だった。
さらに、日中は彼のマンションに行って、掃除や洗濯もして、ひらすら彼に尽くして来た。
「それなのに、あぁ、その彼は、ダンスホールで知り合った若い女(47歳の美容師だという)の方が
良くなってしまって、私を捨ててしまったのです」
 A子と結婚の約束までしながら、B男は、今では国分町の店も売ってしまって、A子とは一切関わりを
持ちたくないという冷たい態度ならしい。
「彼が、今は新しい彼女と毎日ダンスをして食事をして、あのマンションに彼女を泊めて……と想像すると、
嫉妬で気も狂いそうだ。この悔しい気持ちを思うと、1000万円でも慰藉料を取ってやりたい」という話だった。
 私 「何で彼とは結婚しなかったのですか」
 A子「それは……、私に夫がいるものですから……」
 私 「えーっ?それじゃ、あなたの方が結婚詐欺じゃない」
 A子「そんなことはありません。彼は、私に夫がいることを知っていましたし、
    それに、私は、いつでも夫に離婚届にハンコを押させる自信がありました。
    夫は、何でも私に逆らえない人なのです。ただ、夫に離婚の話を言いそびれて
    いるうちに……」
 私 「夫のある人との結婚は成り立ちませんよ。だから、当然あなたは結婚不履行を理由
   に慰藉料なんか請求できませんよ」
 A子「それじゃ、せめて労賃を請求できませんか。私は、2年間彼の身の回りの世話を
    して尽くしたのですから」
 私 「それも無理でしょうね。初めにきちんと雇用契約があったわけではないのだから」
 諦めて帰りかけたA子に、私が言った次の言葉がまずかった。
 「もっとも、あなたの夫からなら、彼に対して夫の座を侵害されたとして慰藉料の請求ができる
  かもしれませんが」
 数日後A子は、夫を連れて私の事務所にやって来た。
 「この人から彼に慰藉料の請求をさせます。先生、裁判を起こして下さい」
 借りてきた猫のように小さくなって何もしゃべらず、ただただうなずいてばかりいるA子の夫は哀れであった。
 私は、訴えを起こすことがこの哀れな夫のためになるとは、到底思われなかったので、お断りした。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

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