「退職金 もらった瞬間妻ドローン」サラリーマン川柳から考える財産分与と退職金
「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」がサラリーマン川柳大賞に
2016年のサラリーマン川柳コンクールの大賞に,「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」が選ばれたそうです。
悲しい話ですが,一面で,離婚・財産分与における真実を表していると言えます。
原則~退職前は財産分与の対象とならない
退職金は,就業規則などに定められている場合,賃金の後払い的な性格を有しています。したがって,退職前(勤続中)であっても,毎月の給料から積み立てられているようなものと言えます。
しかし,いかに「積立金的」「潜在的」に存在していても,離婚成立時にまだ発生していなければ,財産分与の対象にはならないというのが原則です。退職金は,退職までに会社が倒産したり,あるいは問題を起こして懲戒免職されるなどして,支給されない可能性もあるからです。
退職前後での違い
夫がサラリーマン,妻が専業主婦でというケースで考えてみましょう。
仮に,夫が退職すれば退職金1000万円で,就職時から結婚しており,財産分与の割合が2分の1だとすると,妻にすれば,今すぐ離婚するのと,夫が退職してから離婚するのとで,財産分与の額は500万円違ってくるということになります。
例外~支給されるのが確実と言えれば対象となる
もっとも,退職前でも,退職金が将来支給されるのが確実と言えるような場合は,財産分与の対象となり得ます。
単に可能性が高いというだけでなく,「蓋然性」といって,ほぼ確実と言えるほどの水準が必要です。
どのような場合に蓋然性が認められるかはケースバイケースですが,定年退職までの残りの期間が短く,またそれまでの勤続年数が長いほど認められやすいと言えます。裁判例では,定年まで6年で財産分与の対象と認めたものがあります。逆に,10年を超えるようだと,それまで長くその会社に勤めていたとしても,対象とするのは難しいように思います。
なお,財産分与の対象とされる場合も,その金額は離婚時点の評価額になります(したがって,将来支給される金額よりは少なくなります)。また,支払いの時期が,将来実際に退職金が支給された時とされる場合もあります。
「ドローン」は退職後?
このように,財産分与という経済的な面だけ考えると,サラリーマンの夫を支える専業主婦は,離婚するのは夫の退職のとき,または退職が近くなるときまで待つのが有利というのは真実です。
もっとも,離婚は「婚姻を継続し難い」からするのであり,退職まで待てるとすれば(年数にもよりますが),本当に「婚姻を継続し難い」のか,疑問を覚えなくもありません。
この記事を書いた弁護士
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弁護士 曽我陽一(新潟の米農家出身。趣味はマラソン)
1998年 東北大学法学部卒
2001年 弁護士登録(東京弁護士会)
2008年 宮城県仙台市青葉区に曽我法律事務所を開設
2022年 藤田・曽我法律事務所開設
2022年4月~ 東北大学大学院法学研究科教授
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