この事件は勝てますか?
○月×日
事件の依頼を受けるとき、よく「この事件は勝てますか?」と聞かれることがある。事件の勝ち負けはそう単純なものではない。たとえば境界争いでA氏は現在の杭より30センチ北の線を主張し、B氏は30センチ南を主張している。判決で30センチ北の線が認定されたらそれはA氏の勝ち、ということになるだろう。子どもの親権を両親で争っていて裁判所が母親が親権者と認めれば母親が勝ったことになるだろう。離婚をしたい夫としたくない妻との裁判で、離婚が認められれば夫の勝ちかもしれないが、そのかわり夫が予想していた以上の財産分与の金を妻に支払わなければならないとなると単純に夫の勝ちとはいえないかもしれない。
貸金100万円を支払えという判決が出て、訴えでは貸主が勝ったとしても借主に財産も職もなく実際には取り立てが出来なかったというケースもたくさんある。貸主は勝ったといえるのだろうか。
慰謝料請求事件では請求金額の満額が認められることはまず無い。不貞、暴力、交通事故、名誉棄損等々、いろいろな場面で慰謝料請求の訴えが行われる。500万円請求したのに100万円しか認められなかった場合、これを負けと考えるか、いやいや慰謝料請求原因が認められたからこそ100万円を払えという判決が出たのだ、これは勝訴だ、と思うかは人それぞれである。裁判の勝ち負けは本人の主観にもよる。一概に言えず難しい問題である。
弁護士藤田紀子は2023年3月12日に満77歳で急逝いたしました。生前に執筆していた原稿を掲載しております。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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