7月10日 (2013-7-10)
A子は、夫の暴力に耐えきれず離婚を決意したが、夫は、離婚に応じない。
A子から夫に対し、離婚調停を申し立てしたが、夫の気持ちは変わらず、調停が不成立で終了したため、本裁判を提起した。
夫は、暴力を否定し、あくまでも離婚をしないという態度なので、A子を法廷で本人尋問することになった。
前もってA子は、夫の暴力について陳述書を書いているし、事前の打ち合わせでも、きちんと説明できていたので、私は安心して尋問に臨んだ。
ところが、私が具体的な暴力の内容について聞くと、A子は、「覚えていません」の連発。私が、慌てて、「その時、夫は、あなたの髪の毛をつかんで、廊下を引きずりまわすしたのではありませんか」、「あなたを階段の上から蹴り飛ばして、あなたは、腕を骨折したのではありませんか」と聞くと、当然、夫の弁護士から「誘導尋問だ」と異議が出される。
仕方がない、質問の仕方を変えて、A子に、まず診断書を見せ、「骨折でお医者さんに行きましたね。これはどうして骨折したのですか」と聞く。そうすると、A子は、「夫に暴力をふるわれました」と答える。さらに、私が「どんな暴力ですか」と聞くと、A子は、しばらく沈黙し、それから嗚咽で身体が震え、「覚えていません」と言う。
これ以上の尋問は無理だと思いやめると、夫の弁護士は、A子に対し、「あなたは一つ一つの暴力については、何も具体的に述べられないのですね」と勝ち誇ったように聞き、A子は黙ってうなずくばかり。
後で落ち着いてからA子に聞くと、一つ一つの暴力のシーンがフラッシュバックして、言葉が出なくなってしまったと言うのだ。
私は、法廷で答えられなかった理由をA子に陳述書に書かせて、それを裁判所に提出することにしたが、裁判官はわかってくれるだろうか……。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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