2月10日 (2018-2-10)

 弁護士は、法律問題を抱えている依頼者のために代弁するだけではなく、対立状態にある当事者間のトラブルを、上手に解決する役目も負っていると私は自負している。しかし、弁護士をつけたというだけで怒る人もいる。
 A子の夫もそうだ
 A子の代理人として、A子がなぜ別居に踏み切ったのか、なぜ離婚したいのか、離婚に際しての望みは「これこれ」と、丁寧に、しかも、低姿勢に書いて夫宛に出したつもりなのに、A子は、夫から「夫婦の問題なのに、弁護士を立てるとは何事だ」と叱られた。いつも何かというと怒鳴りつける夫に、A子は、自分からは何にも言うことができず、それで今回弁護士を頼むことにしたのだ。
 結局、夫は離婚に同意した。
 A子ら夫婦には共有名義の不動産がたくさんあり、それを貸して賃料を得ていたり、障害を持つ子の将来のためにと掛けていた保険、A子が結婚する時に親が持たせてくれたいわゆる持参金、A子の夫の親が代表者である株式会社の株の保有等々、面倒な財産問題が山ほどあったので、夫も自ら弁護士を委任し、弁護士同士で話し合って裁判にすることなしに妥当な解決が出来た。
 最後は、A子からだけでなく、夫からも、「弁護士を依頼して良かった」という感謝の言葉が述べられた。

 B夫が私に依頼したのは、アクセサリー販売店の営業が破綻に瀕し、到底営業を続けられないので店を閉めたい、それで今ある資産を債権者に支払うつもりだが、満額は払えず、半分くらいの支払にしかならないが、裁判所の破産手続によらずに債権者に納得してもらえることはできないかということだった。
 そこで私は、十数人の債権者に、懇切丁寧にB夫の現状と今後の方針を説明する文書と、B夫の店の帳簿・台帳・資産説明書等資料もつけて手紙を出した。
 そうしたところ、たいていの債権者は、渋々納得して同意してくれたが、内1人の債権者が、怒ってB夫の所に怒鳴り込んだ。「本人が平謝りに謝りに来れば、話を聞いてもやるのに、偉そうに弁護士をつけるとは何事だ。オレは、あくまでもお前と直談判だ」と言ったそうだ。
 仕方がない自己破産の申立をして裁判所の手続にするしかないかと思っていたところ、他の債権者の説得もあって、その債権者も納得してくれ、最終的には、任意弁済で決着した。
 どうか、弁護士をつけたということだけで、腹を立てないでほしい。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。