7月20日 預貯金の相続
自分の死んだ後、相続人の間でモメ事にならないようにと考えて生前遺言書を作成する人は少ない。公証人が作成する公正証書遺言であれば、死後、遺言の検認という手続きも必要なく、そのまま効力を発揮できる。例えば、今住んでいる土地、建物を妻に相続させる内容なら、公正証書遺言書を基にして不動産登記名義の移転が可能である。
ところが、預貯金となると、これが結構やっかいだ。というのは銀行が独自の相続手続きに関してマニュアルを作っていて、相続人全員の署名押印のある合意書という遺言分割協議書を必要としているからだ。相続人相互に不信感があったり、あるいは疎遠になっていたりしてスムーズに連絡が取れない場合もあり、それを心配するからこそ生前に遺言書を書いておくのだから、相続人全員の合意が必要だという銀行の言い分は全く腑に落ちない。私が遺言執行者になると、いつも銀行と言い争いをする。公証人も自分の作成した公正証書がそのまま通用しないことに立腹し、私に銀行相手に裁判を起こすことを勧めるが、それも面倒なことだ。これまで私が取った手段は、その銀行の顧問弁護士に事情を話す。そうするとその顧問弁護士が銀行を説得してこちらの要請に応じてくれる、という訳だ。。最近では公正証書遺言に応じてすぐに指定された相続人に払い出しを認める銀行も増えてきたようだが、地方だと本店のある東京にお伺いを立ててやっと要求に応じてもらえる、ということになっている。
先日、ある男性が亡くなり、生前遺言書は作成していなかったが、相続人は2人の子どもだったので、その2人の子どもの代理人となり銀行と交渉した。亡くなった人の戸籍、原戸籍等を揃えて2人以外に相続人はいないので、2分の1ずつそれぞれの相続人の口座に入金してほしい、と交渉したのだが、銀行の担当者は他に相続人がいるかもしれないので応じられないという。そのために原戸籍等を送ったのに。
「そりゃ、もしかしたら認知していない子どもが他にいて、後から自分も相続人だと言ってきたりするかもしれないが、仮にそんな人が現れて銀行のミスを主張したとしても、それは銀行としても知りえなかったことだから銀行のミスになることはありえません」と説明したが、すぐには納得しないで「検討してみます」という返事だった。
無意味に慎重すぎる銀行の態度に腹立たしい思いをしている。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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