2月10日 公示送達制度

 A夫はB男に100万円を貸したが、約束の日を過ぎても返してくれない。何回電話しても出ず、しまいには電話が不通になってしまった。催促の手紙を出しても宛所不明で返送され、住所地に行ってみるといつのまにか引越したようでもぬけの殻、勤務先に問い合わせてみると、もう会社は辞めて今はどこに勤めているかわからないという。まったくお手上げ状態だがA夫は100万円を諦めるには悔しすぎる。

 相手の住所・居所がわからなくても、裁判を起こして判決を勝ち取る方法はある。普通、裁判は訴状が相手方に送達され、そこから手続きが始まるわけだが、訴状の送達ができない場合には、公示送達という方法が民事訴訟法に規定されている。訴状を裁判所の掲示板に掲示し、官報にも掲載して2週間を経過したときに相手方に到達したとみなされるものである。当然相手方は裁判所に出頭して反論したりしないから、大抵は原告の主張に沿った判決が言い渡される。

 しかし、B男に対し100万円払えという判決が出ても、これを取り立てる方法がない。B男が不動産を持っていればこれを競売にかけるという方法もあるが、100万円を踏み倒して逃げているような男に財産はないのが普通である。A夫は自分の満足のために判決を取るだけのことをやっておくかどうか、私はあまりお勧めできない。

 これに反し、離婚を求めるとか産まれた子どもの父親に認知を求めるというのは判決で離婚や認知が認められれば戸籍係に届け出て記載される。慰藉料や養育費を取るのは無理としても、身分が確定するのでそれなりのメリットはあるのである。  

 C子は付き合っていた男に「子どもができた」と言うと男は「俺達はたいした収入もなく、とても子どもを育てられない、堕ろせ」と言われたが、嫌だと答えたら途端に男は冷たくなり、しまいには連絡が取れなくなってしまった。私の事務所に依頼に来たので男の住民票を取り寄せたり、父親の住所を調べて手紙を出したり、あれこれ手を尽くしたが、どこで何をしているのかまったくわからない。そんなに父親になるのが嫌なのか、C子は今は実家に帰って今年秋の出産の準備をしている。戸籍の父親欄が空欄なのは子どもがかわいそうだから、子どもが産まれたら公示送達制度を利用しての裁判で認知を求める予定だ。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。