1月10日 不貞の慰藉料

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 貸金請求事件は、「〇〇円貸した金を返せ」と訴えるので何の思案もいらない。しかし、慰藉料請求はそうはいかない。被った精神的苦痛を金銭で請求するわけだが、痛みに弱い人はたくさん請求でき、痛みに強い人は少ししか請求できないなんてバカな話はない。交通事故の場合は、受けた傷害が骨折などの重症か、打撲などの軽傷かに分け、更に何ヶ月入院したか、通院したかである程度ランク付けされている。後遺症についても、両眼失明、両下肢の用を全廃したものなどの重い一級から、上・下肢の露出面に手のひら大の醜状を残すもの、局部に神経症状を残すものなどの軽い一四級まで、慰藉料がランク付けされている。

 しかし、一番迷うのは不貞の慰藉料の額である。一般的には夫婦の婚姻期間、不貞の期間や、相手の女性を妊娠させたか否か、デートの際の費用はどっちが持っていたかなどなどが考慮されるが、請求する相手の資力に左右されることも否めない。高額収入のあるタレントなどの不貞の慰藉料が高いことは週刊誌などでも報じられていることである。

 A子は不貞を働いた夫の相手の女性B子に500万円の慰藉料を請求した。B子は不貞は認めたものの、資力がないので50万円しか払えないという。とんでもないとA子は憤ったが、さすがに500万円の請求は無理と考えて、300万円に減額した。B子から今度は頑張って100万円は用意しますと言ってきた。A子は今では反省した夫となんとか夫婦生活を続けているので、内輪の恥をさらすような裁判に持ち込みたくはない。かといって100万円で折れるのも腹立たしい。そこで、250万円を提示しようかと考えている。B子との示談交渉にあたっているのはA子の代理人弁護士の私なのだが、「250万円がダメなら200万円、それでもダメなら150万円とバナナのたたき売りみたいなことはしたくないから、最初から200万円以下では妥協しない、それでダメなら示談交渉は打ち切って裁判にするくらいの覚悟はしておいたほうがよい」とアドバイスしている。

 バナナのたたき売りで思い出すことがある。日本ではバナナのたたき売りというと街頭のオヤジが一かごのバナナを「300円にまけとくよ」と大声を張り上げ、客がつかないと「200円にするよ」「えい、100円でどうだ」とだんだん値を下げていくが、私が以前住んでいたドイツでは、街頭のオヤジが一房のバナナを手に取って「ドライマルク、ドライマルク(約300円)」と通行人に売っている。だれも振り向かないとバナナを二房にして「ドライマルク、ドライマルク」と声を張り上げ、それでも買ってくれる人がいないと、今度はバナナを三房にし、更には四房、五房とバナナを増やして、しまいには腕いっぱいバナナを抱えて「ドライマルク、ドライマルク」と半ば泣き声になっていた。この男は何が何でも三マルクが必要なのだなと思って見ていたことを思い出す。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

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