2月20日 (2021-2-20)
コロナの感染予防対策として在宅勤務が増えた。その結果、夫婦いつも一緒にいて、夫は外で飲まず家飲みで夫婦の絆が深まったというプラス派と、狭い家の中でリモートワークする夫がうざい、どこへも出掛けられずイライラが溜まりいつも夫婦喧嘩が絶えないというマイナス派に分かれているようだ。
A子の場合、夫の在宅勤務が増えたことは致命的だ。夫は大会社の重役だが、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス=家庭内暴力)で、絶えずA子のことを「お前はバカだ、誰のおかげでこんな贅沢な生活ができていると思っているのか」と罵り、理由もなくA子に物を投げつけたり、小突いたり、足蹴にしたりしていた。
それでも夫は出張や宴会が多く、あまり家にはいなかったのでいるときだけは口答えもせずじっと耐えていればよかった。それがここ数ヶ月オンライン会議で夫は家にいることが多く、うっぷんが溜まるのかことごとくA子に八つ当たりして日常の生活に事細かく指示し、それに従わないと暴力を振るう。あるときA子の母親が訪れてきてあまりにもA子が痩せて生気を失っているのにびっくりして医者に連れて行った。
A子は自分がいわゆるDVの被害者だという意識はなかった。それというのは、DVの加害者にありがちなのは、常に暴力を振るっているというわけではなく、ときには「俺にはお前が必要なんだ」などと言って優しく、物を買ってくれたりするからである。しかもDV加害者には医者とか大学の先生とか社会的地位も収入も高い者が多い場合もあり、妻は「夫は偉い人、私はいたらない者」と思い込んでいて、自分をDVの被害者だと認識しないでいるのだ。
A子は夫が投げつけたスマホが顔に当たり鼻の骨を折る怪我をしたのでもう我慢の限界と実家に帰り、母に伴われて私の事務所に相談に来た。A子は離婚すると今の経済的安定が失われると躊躇しているところもあるが、それならできるだけ沢山財産分与と慰藉料を取って別れましょうと提案するとやっとホッとした顔になった。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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