6月10日 (2019-6-10)

 平成30年に相続法の一部が改正され、来年1月13日から施行される。
 夫が死亡した後、現在居住している夫名義の家について、妻に居住権が認められるというのが大きな改正点だが、私が一番ありがたいと思う改正は、自筆証書遺言の方式が緩和されたことである。
 今までは、全文を自書する必要があったので、財産目録もすべて手書きしなければならず、不動産の地番や面積の数字をうっかり間違えると、書き直しするかまたは「〇〇字訂正」と自署して、そこへまた自署しなければならないというわずらわしさがあった。不動産や預貯金を沢山持っている人など大変だった。
 それが改正後は、パソコン等で目録を作成しあるいは預貯金通帳のコピーを添付し、それに署名押印すればよいことになった。目録にも署名押印をしなければならないので偽造も防止できるという訳である。
 それからまた、これまでは預貯金といった相続財産を、銀行などから引き出すことは相続人単独ではできず、相続人全部の申請でなければ預貯金を下ろせなかった。相続人同士仲違いをしていたり、あるいは一人が外国など遠方にいたり、施設に入っていて痴呆状態だったりしたり場合には、なかなか下ろすことができなかった。それが改正法では自分の相続分の3分の1は、単独で払い戻しが受けられることになった。たとえば、親の預貯金が600万円あって子ども2人が相続人だとする。長男の相続分は2分の1の300万円だが、その3分の1の100万円は単独で払い戻しができるので、当座の葬式の費用などに充当できるという訳だ。
 相続法は、昭和55年に改正されて以来大きな見直しがされていなかったが、この間、平均寿命は延び高齢化が進んできたので、大きく見直すことにしたのであろう。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。