9月10日 (2018-9-10)

 元依頼者のA男からは、時々連絡があるが、たいてい良い話ではない。
 「またやってしまいました」という電話。彼は、クレプトマニア(窃盗症)なのだ。
 A男は、自分で店を経営し、十分な収入があるのに、スーパーで洗剤とか下着とか、たいして値段の高くないものを万引きする。その時A男が持参している自分の財布には、一万円札が何枚も入っているのにだ。まさに、病気なのだ。
 A男は、最初に捕まった時は起訴猶予、次に逮捕起訴された時は執行猶予、そして前回逮捕起訴された時は実刑という経過をたどって、半年前に出所したばかりで、「今度こそ懲りた」と言っていたのに。
 以前私は、クレプトマニアを治療する病院の医師の話を聞いたことがあったが、患者に自分のしたこと、反省の気持ち等を作文に書かせ、他の患者の前で発表したり、謝罪文を書いて被害者の所に届ける等というのが治療法の一つだということであった。しかし、どれだけの効果があるのか疑問に思った。少なくとも短期的には完治は望めないだろう。
 日常生活においても、例えば、地下鉄の座席に座っていたところ、目の前に立っていた女性の鞄から財布がはみ出しているのが見えた。次の瞬間、車内が停電になり、2~3分後には再び点灯したが、停電の間に女性の鞄から財布を盗ろうと思えば可能であるかもしれない。また、駅のトイレに入ったら、一万円札が落ちていた。周囲に誰もいないとしたら、黙って持ち帰っても分からないのではないか。
 このように、誰にとっても、誘惑がたくさんある社会で、理性を失わずに生活するのは結構大変なことなのかもしれない。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。