6月20日 (2018-6-20)
事件を依頼する人は、よく「私は勝てますか?」と聞いてくる。しかし、私は、勝ち負けというのが、ピンと来ない。
例えば、貸金100万円の返済を請求して提訴したのに、相手が「借りていない」とか「もう返済した」とか反論し、その言い分が認められて、一銭も取れなかったら、これは負けであろう。しかし、100万円借りたことは認めるが、1回で支払えないから、毎月5万円ずつ20回払いで和解したという場合は、勝ったことになるのだろうか。しかも、分割金5万円を2回位払ったとことで、相手が行方がわからなくなった等という場合は、勝ったとは言えないだろう。それだったら、50万円におまけして1回で払ってもらった方が良いと考える人もいる。これも、勝ったといえるのだろうか。
離婚事件でも、離婚と子どもの親権者を請求したのに、離婚が認められなかったという場合は負けであるが、離婚は認められたが、子どもの親権者は認められなかったという場合も、気持ちとしては負けである。
東日本大震災で児童74人が津波の犠牲になった石巻市立大川小学校の遺族が、石巻市や宮城県に対し損害賠償を求めた事件で、請求額23億円近くについて、控訴審の判決は、14億余円を認めた。これを受けて、県と市では、最高裁判所に上告することを決めたが、遺族側は上告しないという方針だと報道された。遺族としては、学校の事前防災の不備までも認められたのだから、それで十分だ、つまり勝ったという気持ちなのであろう。
本当に勝ち負けの評価は難しい。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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