3月10日 (2018-3-10)

 A男の相談は、家を出て行った妻から生活費を請求されているというものだった。
 A男の妻は無収入、妻の実家が所有する借家の空いている所に愛犬と一緒に住んでいる。A男の収入から算定すると月8万円~10万円ということになるので、妻宛に中間値の9万円を毎月送金する旨の手紙を出した。
 妻から返事が来た。「私の分は9万円で了承します。その他愛犬にかかる費用として、餌代、病気になった時の治療費、美容院でトリミングをする費用、私が散歩に連れて行けない時に犬を散歩させてもらう代行の費用等、月に少なくとも5万円かかるので、それを上乗せしてほしい」という内容だった。それは認められないとこちらが言っても、妻は納得しない。
 仕方がないから、妻に対し、「あなたから家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てて下さい。裁判所に決めてもらいましょう」と言ったところ、妻から調停の申立がなされた。
 調停で話し合いがなされ、こちらは月10万円まで譲歩したが、妻は頑として15万円を譲らず、結局審判になった。
 審判で認められた金額は9万円。妻が主張した犬にかかる費用は、一切認められなかった。
 これがどうしても生活に必要とされる盲導犬や介助犬の場合だったら、話は別かもしれない。また、病気でどうしても必要な治療費などが、生活費に上乗せされる場合はあるかもしれない。しかし、愛犬に贅沢にかける費用は認められないのが通例だ。
 妻は、審判の内容に納得せずに、異議申立をするだろうか。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。