11月20日 (2017-11-20)
いま日本中の至る所に監視カメラが設置されている。
これによって、犯人逮捕につながるメリットはあるかもしれない。アメリカで起きた9・11同時多発テロをきっかけに、アメリカでは、テロとの戦いのために作られた愛国者法を制定したが、日本でもテロや犯罪防止を理由に、監視や警察権力の強化を正当化しようとしている。
しかし、プライバシー権が脅かされていることは間違いない。エレベーターの中で、誰もいないからと安心して化粧直しをしたり、場合によってはスカートをまくってストッキングを上げ直したりしている姿が、カメラに収められているかと思うと、ゾッとする。
監視カメラは、常時、無数の人々の行動を記録し、被撮影者の知らないところでの再生や確認も可能であり、管理運用や利用の仕方によっては、無数の人々の肖像権やプライバシー権を侵害することになる。さらに、顔認証システム機能が濫用されれば、膨大な監視カメラ画像から特定の個人を検索し識別することにより、特定の人の行動を過去に遡って監視することさえ可能となる。また、GPS発信装置によれば、個人の稼働履歴がすべて明らかになる。このようなものが捜査機関で利用されれば、日本社会は、捜査機関による常時監視が可能な社会になってしまう。
監視カメラやGPS機能を利用した捜査が、何らの法規制もないまま、捜査機関の判断によって無限定に拡大していけば、プライバシー権が過度に侵害されるおそれがある。
プライバシー権は、単に「一人にしてもらう権利」にとどまらず、公権力が侵すべきではない私的領域を守る重要な人権なのである。プライバシー権等の侵害の問題は、現在の令状の運用でも発生している。公表された通信傍受の実施状況によれば、無関係通話が傍受実施通話の約83%を占めるとのことである。これらの通話は、本来傍受されるべきではないものだったのである。
このような問題点を指摘して、日弁連では10月に開催された人権擁護大会で、
・ 公権力が、自らまたは民間企業を利用して、あらゆる人々のインターネット上のデータを網羅的に収集・検索する情報監視を禁止すること。
・ 監視カメラ映像やGPS位置情報などを取得し、それを捜査等に利用するに際して、これを適正化するため、新たな立法による法規制を行うこと。
という決議案を提案したが、満場一致で可決されたことは言うまでもない。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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