12月15日 (2016-12-15)

 選挙で投票できる年齢が、20歳から18歳に引き下げられたことを契機に、「少年法が適用される年齢も、現在の20歳未満から18歳未満へ引き下げるべきだ」という議論が起きている。
 少年法の年齢引き下げに関する世論調査によると、反対よりも賛成が多い傾向にある。その背景として、「少年非行が増加している。凶悪化している」という認識があるようである。
 そこで日弁連では、次のような主張をし、少年法の適用年齢を引き下げることに反対することを呼びかけている。

 現在、家庭裁判所で扱われる少年の約5割を18・19歳が占めている。つまり、仮に少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げると、これまでの約5割の少年が少年法の手続の対象外となり、専門的な調査や教育的働きかけを受けられなくなってしまう。少年事件については、原則としてすべての事件を家庭裁判所に送致しなければならない。家庭裁判所の任務は、非行の結果の重大性で画一的に処遇を決めるのではなく、少年の非行の原因と背景を解明して、少年の立ち直りにとって最も適切な処遇を探ることとされている。
 成人も少年もただ罰を与えさえすれば、自動的に改善・更生する者ではない。特に、少年は成長過程にあり、未成熟で、少年犯罪・非行の多くは、少年の資質や能力と生まれ育った環境に大きく関係している。そのため、指導の余地も大きく、変化が期待できる20歳頃までは、適切な処遇による改善効果も高い。
 家庭裁判所は、少年審判のため、必要があると判断した少年については、少年鑑別所に送致する。少年鑑別所では、鑑別技官が検査や少年との面接を実施し、「鑑別結果通知書」にまとめる。これは、家庭裁判所での審判の重要な資料となり、少年院や保護観察所における処遇の資料になる。
 家庭裁判所の調査官は、少年との面接のほか、保護者・学校・職場・被害者から情報を得て、少年の成育歴や心身の状況、家族・交友関係や生活状況、さらには被害の状況などを調査し、「少年調査票」にまとまる。
 鑑別・調査の結果を踏まえ、家庭裁判所の審判で、処分が言い渡される。
 保護観察や少年院送致などの保護処分は、刑罰とは異なり、少年の未成熟性に着目した教育的働きかけによって、少年に自らの行為の意味を理解させ、社会的不適応の原因を除くことが目的である。自らの行為や過去の生活態度と向き合わせ、さらに被害者の苦しみにも直面させるなどしながら、少年の再非行を防ぎ、立ち直りを目指している。
 仮に、少年法の適用年齢を18歳に引き下げることになれば、「子ども・若者育成支援推進法」(二〇一〇年施行)が困難を抱える子ども・若者の成長発達に対する国・地方公共団体の支援施策の重要性を確認したばかりであることとも矛盾、逆行する施策となる。
 そして、何よりも、これまで少年法の適用を受けてきた若者の多くを、「自己責任」の名の下に、家庭裁判所の手続から放出することになり、結果として、少年の立ち直りと成長支援の機会を奪い、ひいては再犯者を増加させ、新たな被害者を生み出すことになりかねない。

 このような少年法の適用年齢を18歳に引き下げる法案に、弁護士の多くは反対している。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。