9月20日 (2016-9-20)

 C太郎が死亡した。相続人は、妻D美と先妻との間の2人の子どもだ。
 D美は、C太郎が先妻と離婚した後、程なくしてC太郎と結婚し、20年間の結婚生活を送った。C太郎と先妻との夫婦生活は10年足らずだったので、D美は、先妻の倍以上C太郎と夫婦だったわけである。C太郎は、10年前に退職した後、ずっと胃潰瘍を患い、最後は胃がんで亡くなったのだが、D美は、ひたすらC太郎の看護に努め、尽くした。C太郎も、D美に感謝し、「おまえに『すべて遺産をやる』との遺言を書くからな」と言っていた矢先に死亡した。
 D美は、先妻との間の子ども2人に、預金500万円あるのをやろうと思って連絡したところ、D美がC太郎と住んでいたC太郎名義の自宅不動産が、時価1千500万円なので、先妻の子らは、500万円の現金の他に、自宅不動産をD美が単独で相続するなら、その代償金として500万円を払えと言って来た。
 現在遺産分割調停中だが、生前C太郎は、2人の子どもに対して、常々気に掛けて品物を送ったり、送金したりしていたが、子どもたちらは礼の電話も手紙もなく、また、C太郎の入院中も、一度も見舞いに来なかった。
 それが、子であるというだけで、権利主張するとはけしからんとD美は、憤っている。また、D美は、今度とも自宅に住み続けるつもりだが、そのために、さらに500万円は到底出せないと嘆いている。
 D美に、寄与分を主張する権利があると考えるが、子どもらは、もともと妻が貢献していることを考慮して相続分が半分とたくさんあるのだから、さらに寄与分を主張するのはおかしいと反論する。
 私も、D美の代理人として、D美の憤りや嘆きはもっともだと考える。同じ子どもといっても、ずっと父親と一緒に生活し、独立しても何かと往き来のある子どもと、幼いに別れ、それ以後子どもらしい心遣いもない疎遠な子どもとでは、大きな違いがあるはずだが、法律では一律に、妻が2分の1、子どもは2分の1と相続分が決められているのだ。
 調停委員が、どこまでこちらの実情をわかってくれるか、今後の調停の進め方を見守りたい。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。