ストーカー規制法 -SNSも対象に-

電話やメールは規制対象

ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)は,当然のことですが,ストーカー行為を禁じています。

ストーカー規制法にいう「ストーカー行為」とは,「つきまとい等」を繰り返し行うことです。

そして,同法は,「つきまとい等」に当たる8つの行為を定めています。

その中の1つに,

電話をかけて何も告げず,又は拒まれたにもかかわらず,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,若しくは電子メールを送信すること

があります。

したがって,好意を寄せる相手にしつこく電話をかけたり,メールを送ったりする行為に対しては,ストーカー規制法で対処することができます。

具体的には,警察はストーカー行為者にたいして警告し,それでも従わなければ禁止命令を出すことができます。また,刑事事件として行為者を逮捕することもできます。

アイドル刺殺未遂事件

2016年5月21日に発生したアイドル刺殺未遂事件では,容疑者は被害者のブログへの書き込みをしていたそうです。

前述のとおり,電話やメールはストーカー規制法によって規制されていますが,ブログなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への投稿は規制対象外です。

そのため,被害者の警察への相談はストーカー相談として扱われず,ストーカー対策専門の部署に報告されないまま,事件が起きてしまいました。

SNSも規制対象の流れへ

この事件を受けて,自民・公明両党は,SNSへの投稿を規制対象に加えるストーカー規制法の改正を検討することになりました。

また,警察庁も,SNSへの書き込みがストーカー被害に発展するおそれがあることを指摘し,警察本部の専門部署へ速報を徹底するよう求める通達を全国の警察に発しました。

かつてはメールも規制対象外だった

実は,ストーカー規制法ができた当初は,メールは規制対象になっていませんでした。

しかし,メールを用いたつきまといも行われている実情から,平成25年,メールを含める法改正が行われました。

同じように,社会の実情に合わせて規制対象が変化ないし拡張していくのは必要なことです。

しかし,同時に,規制対象を広げることによる負の側面にも注意しなくてはなりません。

特に,SNSは,電話やメールのような一対一の関係と異なり,不特定多数に伝達される点で,表現行為としての性質が強くあります。投稿を過度に委縮させるような法改正にならないか,慎重に検討すべきだと思います。

この記事を書いた弁護士

弁護士 曽我 陽一
弁護士 曽我 陽一
弁護士 曽我陽一(新潟の米農家出身。趣味はマラソン)
1998年 東北大学法学部卒
2001年 弁護士登録(東京弁護士会)
2008年 宮城県仙台市青葉区に曽我法律事務所を開設
2022年 藤田・曽我法律事務所開設
2022年4月~ 東北大学大学院法学研究科教授

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