4月10日 (2016-4-10)

 A子は、もう3年も夫と別居している。
 離婚調停を依頼された私は、夫婦の間に未成年の子どもはいないし、性格の不一致で別居したのだから、子どもの親権や慰藉料の問題はないと考え、専ら財産分与についての請求に重点を置いた申立書を提出した。
 調停期日にはA子も出席したが、当方の言い分は、すべて文書にしてあるので、調停委員からの質問に口頭で答えるのは、ほんの10分位で終わる。これに対し、夫から事情を聞く時間は1時間近くになり、イライラしながら申立人控室で待っている。
 夫からの聴き取りが終わると、再び当方が調停委員に呼び出され質問されるが、当方の反論は「それは甲第1号証の資料を見ていただければ分かります」と言って、また10分位で終わる。
 私としては、くどくど説明しなくて済むように、すべて書面や資料を出している。それだけきちんと準備しているのだという自負もあるが、A子からしてみれば納得できないようだ。「なんで私の話をちっとも聞いてくれないの?」という不満だ。「では、どんなことを言いたいの?」と私が聞くと、別居に至った原因についてだと言う。
 A子は、夫からひどいことを言われた、一切家事の協力してくれなかった等という不満をぶちまけたいという。それは財産分与に関係ないと言って、A子の願望を無視していたら、調停の回を重ねる度に、だんだんA子が暗くうっ屈しているように思えたので、ある時、調停委員に時間を取ってもらって、A子の言い分を聞いてもらった。
 ほんの些細なことの数々だったが、それからA子はずい分すっきりしたようだ。
 法律的にみて時間の無駄と思われるようなことでも、特に離婚事件に関しては、本人の気持ちも、もっと慮らねばならないのだと反省した。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。

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