10月10日 (2015-10-10)

 A男は、妻B美から性格不一致を理由に離婚を言い出され、B美の意思が固いならと離婚に応じたが、離婚後B美の不貞が判明した。しかも、不貞相手は、娘の高校時代の家庭教師だった。A男は、憤ってB美と元家庭教師に慰藉料請求事件を提訴した。
 B美と元家庭教師から答弁書が出されたが、それと共に娘の陳述書が添えられていた。それは、B美がA男の暴力・暴言に耐えながら自分を育ててくれたこと、A男は全くの仕事人間で、何ら家庭的なことはしてくれなかった、一家の団らんなんて全くなかった、という内容だった。
 それを読んだA男は、私に慰藉料請求の裁判を取り下げてくれと言う。私が、「娘の書いた内容が本当のことだから?」と聞くと、全く事実に反する内容であり、むしろ、暴言を吐いていたのはB美だし、B美は、嘘ばかりついて金遣いも荒く、娘はA男に同情的だと思っていたと言う。
 それなら、なぜ取下げ?
 A男が言うには、もし、このまま裁判を続けると、娘の言っていることが本当かどうか争うことになり、娘を裁判に引き込むことにならざるを得ない、娘は、今も母親であるB美と一緒に生活しているから、B美への遠慮から本当のことは言わないだろう、娘を悩ませるには忍びない、だから裁判を取り下げると。
 中国の故事や大岡裁きの話で、一人の子どもを欲しがる二人の母親に子どもの腕を引っ張って取り合いさせたが、痛がって子どもが泣くのに耐えられず、腕を放した方に子どもを渡した、という話があったが、私はそれを思い出した。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。