5月20日 (2015-5-20)

 C子は、夫と別居していて、いま離婚の裁判中だ。
 5歳の長女D美と共に実家で生活しているが、夫からD美と面会したいという調停が申立てられた。
 C子は、D美を夫に会わせたくない。その理由は、C子は、同居している時に散々夫から暴力をふるわれ、泣いて暮らすことが多く、その姿を見ていたD美は、いつも母親であるC子を慰めてくれ、「お父さん、悪い人だね」と言っていたからだと言う。
 C子が夫と別居してからは、D美も誰に気兼ねすることもなく、C子と祖父母ととても明るくのびのびとした生活を送っている。それを、父親に会わせて、以前のことを思い出させたくないというのが、その理由だ。
 しかし、父親には、子どもと面会する権利が基本的にはある。子どもを虐待したとか、特別な事情がない限り、父親の面会交流権はある。
 いつまでも、会わせたくないと言ってもいられない。しかし、C子がD美と一緒に、夫と時を過ごすのは耐えられない。
 このような時、家庭裁判所には、面会室を利用することができる。面会室では、子どもが父親と会ってどんな様子か調査官も同室して見守ることができるし、隣室で母親や代理人弁護士、調停委員がモニター画面で見ることができる。いわば、試験的に面会させるのだ。
 これには、C子も了承した。
 先日の面会室での様子は、最初D美はちょっと怯えたようだったが、面会室に置いてある絵本やおもちゃで遊ぶうちに、父親とも話もするようになった。皆が観察していることがわかっているから、父親が非常識な行動をとるはずもない。
 問題は、2回目以降の面会をどのようにするかだが、C子は未だに夫を恐がっているので、誰か親とか友人とかと一緒に面会させるしかないか。いざとなったら、その役を私がしなければならないかもしれない。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。