10月10日 (2012-10-10)

A子は、結婚して夫の母親と同居し、子どもも3人生まれたが、姑の仕打ちに常々我慢ならない思いをしていた。
 夫の母親は、A子のすること為すことにいちいち文句をつけ、A子が困って夫に相談しても、夫は取り合ってくれない。
 思いあまってA子は、3人の子どもを連れて実家に帰った。
 夫の母親は、「あんな嫁はいなくていいが、孫は跡取り息子だから、長男だけは取り戻して来い」と言っている。
 夫は、A子の実家に来て、長男を連れて帰りたいと言うが、A子が応じるはずはない。
 別居して3年後、A子から家庭裁判所に離婚調停の申立をしたが、調停が不成立で終了したので、離婚の本裁判を提起した。
 今日は、A子と夫の尋問の日。
 夫は、さんざん「自分は暴力をふるったことはないし、不貞をしたこともないし、何も悪いことはしていない」と言う。私は、反対尋問で、「あなたは、A子さんがなぜ家を出たか理解できますか」と聞くと、夫は、全く理解できないという。さらに、私が、「あなたは、これから先A子さんが、あなたの家に戻って再び円満な生活ができると思いますか」と聞くと、夫は、「うちのばぁちゃんもお人好しなので、A子が気の強いところを直せば、十分円満にやっていける」と答えた。
 私の反対尋問は、それだけ。
 A子は、不満そうだった。A子は、自分が何で家を出たのか、自分が気が強いのではなくて姑が自分をいじめたのだ、ということをもっと主張してほしかったようだ。
 私としては、夫がA子の気持ちを読めなくて、自分の母親の肩を持ってばかりいて、事態を深刻に考えていないということを裁判官にわかってもらえればよいと考えたのだ。
 果たして尋問後の和解では、裁判官は、夫に対し、判決を出すとしたら離婚を認めざるを得ないとした上で、離婚を勧めた。
 A子も、いまここで離婚が決まるなら、慰藉料はゼロでよいと譲歩したが、夫から拒否された。
 夫は、未だになぜ離婚しなければならないのか釈然としないでいることだろう。なにせ読めない人なのだから。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
藤田・曽我法律事務所代表弁護士

仙台で弁護士を始めて50年以上。

この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。

注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。