別れた夫婦の間の子ども (2006-2-15)

 夫婦の間で離婚の合意はできているが、その間の子どもの親権者をめぐって話し合いがつかず、調停に持ち込まれるケースが多い。
たいていは取り合いである。調停でも話がつかない時は、家庭裁判所が審判で決めるが、その時裁判所が考慮する内容としては先ず愛情。
しかしながら、この愛情というのはなかなか目に見えないもので、絶対子どもを手放したくないと言っている父親の本音は、養育費を払いたくないから、ということもある。逆に、母親の方が、子どもは夫にやるという本音が、子どもが嫌いなのではなくて、夫が愛人と一緒に暮らすのを妨害したいから、ということもあって、言葉の裏にある真の愛情を見定めるのがむづかしい。
 次に子どもの年令。生まれて間もない乳呑み子は、たいてい母親が親権者となるであろうし、子どもが大きくなって自分の意思をはっきりさせることができるようであれば、その意思を重視する。
それから現況、つまり、子どもが現在誰と同居しているか、これが裁判所の判断の重要な要素となる。
だから母親が子どもを連れて実家なりアパートなりで別居するようになったか、子どもを夫のもとに置いて自分だけ家を出たかでずい分ちがって来るのである。
 それを当事者も知っているから、すさまじい子どもの取り合いとなる。今でも印象に残っている事案を紹介しよう。

 農家に嫁いだA子は、姑の冷たい仕打ちにがまんできず、2歳の男の子(仮にアキラとする)を連れて実家に帰った。
嫁ぎ先のB家では、A子と離婚するのはいいが、後継ぎ息子だけはやれない、という訳で、アキラが保育所の砂場で遊んでいるすきに連れ戻した。
今度は、A子が何とかアキラを連れ戻したいと何回もB家のまわりを徘徊してすきを狙っているが、B家では、それを予想していつも姑がアキラをおんぶして片時も離さない。
思い余ったA子は、ある時包丁を隠し持って行って、姑のおぶい紐を切って泣き叫ぶアキラを奪い返した。
 BからA子に対して人身保護法による救済の請求がなされ、この事件で私は、子どものための国選代理人になったが、結局は離婚事件の方で和解が成立した。
アキラの戸籍上の親権者にはBがなったが、毎日養育監護するのはA子になった。
そして、1ヵ月に最低1回はBはアキラに会う機会を確保して、父子の接触をはかることとなった。また、当然BからA子にアキラの扶養料も毎月支払うこととなった。妥当な解決であったと思う。

 夫婦は離婚してアカの他人になるが、親子の縁は切れない。そこで、いつも問題となるのが離婚した配偶者のもとにいる子どもとの面接権である。
たいていは子どもは母親のもとにいて、父親から面接を求められるが、会わせたがらない母親が多い。その理由は、せっかくたてた教育方針やしつけをたまに会う父親が甘い顔をしてダメにしてしまうからとか、父親が子どもに「お前のお母さんは浮気な女だったよ」などと悪口を言うからとか、別れた夫のことはすっかり忘れてしまいたいから、など様々であるが、私は、原則としてできるだけ会わせる方がよいと考える。
自分にとっては憎くて別れた夫でも子どもにとっては一人しかいない父親で、成長の過程で父親に相談したいことも出て来るだろう。
また、父親も定期的に子どもに会うことによって、子どもが大きくなってたくさん食べ、進学もしたい、旅行にも行きたいという希望を理解して毎月の養育費を増額してやろうかという気にもなるのである。
別れた夫婦が、子どもと一緒に食事をしながらその後の苦労話などを語り合う、というのもいいではないか。

この記事を書いた弁護士

弁護士 藤田 紀子
弁護士 藤田 紀子
仙台で弁護士を始めて50年以上。

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