マザコンの夫 (2006-1-15)
昔は娘を嫁に出す時、親は言ったものだ。
「お前は○○家の嫁になったのだから、○○家の家風になじむように努めるんだよ。つらいことがあっても、じっと辛抱すれば、だんだんお前も○○家の嫁として認められていくからね。決して、実家に戻りたいなどと思うんじゃないよ」。
今は娘を嫁に出す時、親は言う。「お前の部屋はそのまま残しておくからね。いやなことがあったらいつでも帰っておいで。お父さんもお母さんも暖かく迎えてあげるからね」。
ひところ前のように出戻りに対する偏見がなくなった。「出戻り」という言葉も死語に等しくなった。だんだん子どもの数が減少して、親子の関係が密になり、特に結婚してからもマザコンから脱し切れない男が多くなった。
夫は朝出がけに実家の母親に電話する。
「お母さん、ボクこれから会社に行くところ。昨晩お母さん風邪気味だって言ってたけど、今朝はどう?大丈夫?ボク電話でお母さんの風邪うつったのかな。頭が痛くて、熱っぽくて、何だか会社に行きたくないな」、
「△△ちゃん、そんなこと言わないでちゃんと会社に行きなさい」
「はーい、お母さん、わかりました。じゃあ行って来ます」。
帰宅すると、また実家の母親に電話する。
「お母さん、ボク今帰ったところ。会社で頭痛くて早退したいなと思ったけど、とうとう5時までがんばったよ、ボク。えらかったでしょ」。
そんな男は妻にも要求する。
「ボクのお母さんは、ボクをキミにとられたと思ってとても寂しい思いをしてかわいそうなんだよ。だからキミもボクの実家にはうんと尽くしてもらわないと困るよ」。
だんだん離婚事件が増えて来た。特に妻からの離婚請求が多い。その原因の一つに、夫のマザコンがある。法律で定められている離婚原因は、不貞、悪意の遺棄など5項目でその内の1つは「婚姻を継続し難い重大な事由」であるが、これに夫のマザコンが該当するか否かは一概に言えない。それ以外は何も文句の言いようがないのに……というケースが多いからだ。そして、これは、夫が飲んだくれるとか、競輪競馬に凝って生活費を妻に渡さないとかいうケースと違って夫に罪の意識がないので、夫に反省を求めて改善させるということもむづかしい。結婚前に冬彦さんをつかまないように男性を見る目を養うことが大切であろう。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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