妻の不倫 (2006-1-5)
男の嫉妬は恐ろしい。
「交際していた女性の心変わりを恨んで刺殺!」とか、「三角関係を解消しようとして、話し合いの途中逆上して刃物をふるう!」等という見出しが新聞を賑わしているのは、今に始まったことではないが、私の事務所に持ち込まれるのは、殺傷沙汰の刑事事件ではなくて、慰藉料請求や離婚の民事事件が多い。
弁護士の仕事をして20数年、妻の不倫(法律用語では「不貞」という)が、年々多くなっていること、しかも、不貞を働いた妻からの離婚申立が多いこと。それにもかかわらず、協議離婚に応じない夫の多いこと、が私の実感である。
あるケース。長距離トラックの運転手である夫が、早朝家を出たが、「もしや、オレのいない間に……」と妻を疑い出したら、いてもたっても居られず、高速道路を引き返して猛スピードで家に戻ってみると、案の定、妻が愛人を家に呼び入れていた。
夫は、妻の相手の男をつかまえて、住所・氏名を聞き出し、500万円の慰藉料の請求書をつきつけた。妻は、そんな夫に嫌気がさし、離婚を決意するが、夫は意地でも別れない。
「毎日夫にいじめられてつらい。何とか夫と別れたい」と妻が相談に来たが、不貞を働いた妻からの離婚の申立が裁判で認められることは難しいだけに、にわかに良い解決方法はない。
別のケース。妻が、勤務先の若い販売員と深い関係になったことを、夫が妻の書いたラブレターの下書きから知り、これを高校1年と3年の2人の息子にも教えて、3人で不貞の妻を責める。それだけでなく、妻の両親から慰藉料と称して200万円を取り立てた。妻は、反省しているが、許してもらえないので、いっそのこと離婚したいという相談である。
これも、前のケースと同様、夫が協議離婚に応ぜず、示談が難航している。
こんな家庭は冷え切っていて、いわば、家庭内別居の状態にあり、夫にとっても良いはずはないのだが、夫が離婚に応じないのは、意地かメンツか、それとも深い深い愛情なのだろうか……。
私にはわからない。
この記事を書いた弁護士
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藤田・曽我法律事務所代表弁護士
仙台で弁護士を始めて50年以上。
この地域に根を張って、この地域の人々の相談に応じ、問題の解決に図るべく努力をしてまいります。
注:弁護士 藤田紀子は令和5年3月12日に満77歳で急逝いたしました。
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