自賠責保険で留意すべき2つのポイント
自賠責保険について留意すべき点
自賠責保険について,注意すべき点を二つ紹介します。
1.被保険者の範囲
一つは,被保険者の範囲です。
自動車損害賠償保障法(自賠法)は,「自己のために自動車を運行の用に供するもの」。
すなわち運行供用者に対して,無過失に近い損害賠償責任を課しています。
しかし,強制加入保険である自賠責保険の方は,運行供用者であるというだけでその損害を填補するわけではありません。
具体的に言うと,自賠責保険で填補される損害は,自動車の保有者または運転者の損害賠償義務による損害です。
ここでいう保有者とは
「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で,自己のために自動車を運行の用に供するもの」をいい,
一方,運転者とは
「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事するもの」をいいます。
したがって,自動車を使用する権利を有しない者,たとえば,盗んだ車を運転していた者の損害賠償責任による損害は填補されません。
もっとも,その場合は,政府保障事業から損害填補が受けられる可能性があります。
2.自賠責保険の損害の範囲
もう一つは,損害の範囲です。
自賠責保険は人身損害に限られる
自賠法は,「他人の生命又は身体を害したとき」の損害賠償義務を定めたものなので,自賠責保険が填補する損害も,人身損害に限られ,物損は填補されません。
物損は対象外
ときどき,「物損については相手の保険から補償されないのか」というご質問を受けますが,加害者が対物賠償付きの任意保険に入っていれば補償されるものの,自賠責保険しか入っていない場合はそれはできません。
また,保険金が支払われない物損について,加害者本人に請求する場合も,運転していたわけではない保有者に請求するのは,使用者責任など,何らかの根拠がなければできません。