交通事故被害者が自死(自殺)した場合,損害賠償額は減額される?
2017年5月20日公開
損害賠償が減額される素因減額とは
被害者がもともと持っている要因(たとえば,もともと持病があった,特殊な体格ないし体質だった,など)が損害に結び付いているときに,その分だけ損害賠償額が減額されることを,「素因減額」といいます。
「素因」には,
1.既往の疾患や身体的特徴などの「体質的素因」
2.精神的傾向などの「心理的要因」
の2つがあります。
交通事故の被害者が自死(自殺)した場合
ところで,交通事故の被害者が,後遺症に悩むなどして,自ら死を選ぶということも,不幸なことですが,現実に起こっています。
交通事故にあった人で自殺する人は必ずしも多くないことから,そのようなケースでは,果たして事故のせいで亡くなったと言えるのか,事故と死亡(自死)の結果との間の相当因果関係が問題になります。
もしも相当因果関係が認められれば,加害者に対して,死亡慰謝料,逸失利益,葬儀費用など,死亡に関する損害賠償請求権が認められます(そして遺族がそれを相続します)。
もっとも,その場合も,自殺には被害者の心因的要因が寄与しているとして,素因減額がなされるのが一般的です。減額割合は,8割程度になることが多いです。
例えば,
1.死亡以外の損害(治療費,休業損害,傷害慰謝料など)が500万円
2.死亡による損害(死亡慰謝料,逸失利益など)が5000万円
だとしたら,
5000万円の方は8割減額だと1000万円となり,損害賠償請求権は全体で1500万円となります〔500万円+5000万円×(1-0.8)〕。