労災遺族補償年金の損益相殺的調整
平成27年3月4日付けで,最高裁判所大法廷が,労災の遺族補償年金は逸失利益の元本との間で損益相殺的な調整を行うべきである,との判決を出しました。
これは,遺族補償年金が,
- 元本に充当されるのか
- 遅延損害金にまず充当されるのか
という問題です。
仮に,逸失利益3000万円で,1年後に遺族補償年金1000万円を遺族が受け取った,という例で考えます。
遅延損害金に充当されると考えれば
1000万円のうち150万円(3000万円×5%×1年)が発生済みの遅延損害金に充当され,残りの850万円が元本に充当されます。
その結果,請求できる逸失利益は,「2150万円及びこれに対する事故1年後からの遅延損害金(5%)」となります。
これに対し,元本に充当されるとすると
不法行為のときに損害が填補されたものと見られるため,請求できる逸失利益は「2000万円及びこれに対する事故日からの遅延損害金(5%)」となります。
最高裁の判決は,元本に充当するとの立場を取ったもので,被害者にとっては不利な計算方法ということになります。
判決の事例は,長時間労働が原因で亡くなった方の遺族が雇用主に損害賠償を求めた事案ですが,交通事故でも,通勤中の事故や業務上の事故で同じ問題が生じることになります。