交通事故被害者が亡くなった際の損害賠償請求権と相続

交通事故被害者が亡くなった場合の相続

交通事故の加害者が亡くなったときの損害賠償義務の相続について説明しましたが,被害者が亡くなったときの損害賠償請求権の相続も基本的に同じです。

相続人各自は,その法定相続分に応じて相続しますので,たとえば,夫が4000万円の損害賠償請求権を残して死亡し,相続人はその妻(法定相続分2分と1)と,長男と二男(同4分の1ずつ)であれば,妻2000万円,長男1000万円,二男1000万円の請求権をそれぞれ取得することになります。

このように,相続人が損害賠償請求権というプラスの財産を相続する場合,相続放棄を考えるケースは多くないと思います。しかし,被相続人に,それに上回る負債がある場合は,損害賠償請求権を失うことになっても,相続放棄を検討せざるを得ません。

相続放棄しても,生命保険金は受取可能

それでは,相続放棄してしまうと,およそプラスの財産(現金)を取得する余地はないのでしょうか。

これは,被害者を相続する場合だけでなく,加害者を相続する場合も同じですが,相続の一般論として,生命保険金は相続財産の対象外です。

つまり,上記の例で言えば,妻または子は,夫を被保険者とする生命保険金の受取人になっていれば,たとえ夫の相続を放棄しても,保険金を受け取ることができます。なお,この生命保険の受取人が夫自身になっている場合は,相続人がそれぞれの法定相続分に応じて保険金を取得します。

また,自動車保険の搭乗者傷害特約の保険金も,同じように,相続人は相続放棄しても受け取れると解した下級審判例があります。

慰謝料請求は出来る

また,死亡事故の場合は,近親者固有の慰謝料が認められますが,これも相続財産の範囲外です。

上記の例で言えば,妻または子は,相続放棄すると,死亡した夫の損害賠償請求権(慰謝料を含む)を行使することはできませんが,夫(または父)を亡くしたことによる自分たち固有の慰謝料請求権を行使することはできます。

Follow me!