遅延損害金と弁護士費用の損害賠償
判決のおまけ
治療費,休業損害,慰謝料,後遺症慰謝料,逸失利益・・・。
交通事故の被害者は,加害者ないしその保険会社に対し,各損害の額を積み重ねていき,その合計額から既に支払われている金額を差し引いて損害賠償請求します。
すんなり支払ってもらえれば問題ありませんが,支払ってもらえなくて,訴訟を起こさざるを得ない場合もあります。
訴訟提起する場合は,上記の金額に弁護士費用を加算し,さらに遅延損害金の支払いも請求します。判決になれば,これら弁護士費用及び遅延損害金も通常は認められます。
遅延損害金
遅延損害金とは,債務の履行が遅れたために発生した損害金です。
金銭債務の場合,利率は法定利率の年5%になります。
さらに,交通事故の場合,この遅延損害金が事故日から発生します。
後遺症が残るような怪我だと,治療だけで半年や1年かかるのはざらです。そこから後遺障害認定を受けたり,示談交渉したりで何か月かかかり,さらに訴訟提起した後も判決までに何か月もかかります。
仮に,300万円の請求事件について,事故後2年で判決を受けたとすると,遅延損害金は30万円になりますので,決して小さい額ではありません。
弁護士費用
損害賠償請求を弁護士に依頼して進めれば,当然ながら,弁護士費用が発生します。
判決になった場合,弁護士に依頼せずに訴訟を進めることは困難であることから,この弁護士費用も損害の一部として支払を命じてもらうことができます。
認められる弁護士費用は,認容額の1割程度になることが多いです。実際にはそれ以上の弁護士費用がかかっていることが少なくありませんが,それでも,賠償してもらえるのともらえないのとで,違いは小さくありません。
判決以外だと付きません
このように弁護士費用や遅延損害金が加算されるのは,判決のときだけです。
任意の示談の場合はもちろん,ADR(交通事故紛争処理センターなど)や調停,裁判上の和解でも,弁護士費用や遅延損害金を付けた解決はしません(理屈上は,「弁護士費用と遅延損害金も払います」と加害者側が言えば払ってもらえますが,実際にそう言ってもらえることはまずありません)。
訴訟した方がよいのか
判決とそれ以外の解決を比べると,弁護士費用及び遅延損害金の点で判決の方が良い,だから安易に示談せず,訴訟を起こすべきだ,というのもひとつの考え方です。
しかし,訴訟提起しても,常に請求額どおりの判決が出るとは限りません。また,仮に勝訴したとしても,それまでに時間がかかる,被害者本人の出頭が必要になるかもしれない,といった問題もあります。
敗訴リスクや,時間と手間を省くメリットを考慮した上で合理性があれば,訴訟外での解決を図ってもよいでしょう。