交通事故時、シートベルトを装着していないと過失相殺されるケースと,されないケース

シートベルトの装着義務

私が子どもの頃は,シートベルトを着用しないのが普通でした。親もシートベルトしろと言いませんでしたし,子どもながらにかっこわるい気がして,自分でも締めませんでした。

しかし,昭和60年の道路交通法改正により,運転席と助手席のシートベルトの装着義務が規定されました。後部座席は努力義務にとどまっていましたが,平成19年の同法改正により,後部座席も装着義務が規定されました(ただし,後部座席は,高速道路以外では違反点数は付きません)。

今では,映画やドラマを見ると,かなりの悪役でもきちんとシートベルトを着用しています。それほどにシートベルトは定着してきたと言えます。

シートベルト不装着と過失相殺

それでは,同乗者がシートベルトをしないで交通事故に遭った場合,運転者や事故の相手方に対する損害賠償請求の際に,過失相殺がなされるのでしょうか。

向井宣人「後部座席シートベルト,チャイルドシート不装着の場合における過失相殺」(赤い本平成28年版下巻27頁)が,この問題に関する裁判例を分析しています。

過失相殺がされないケース

この論稿では,過失相殺がされないケースとして,シートベルトの不装着と損害の発生または拡大の間に因果関係が認められない場合が挙げられています。

特に,後部座席の場合は,助手席と比べると,シートベルトを装着した場合としなかった場合とで,怪我の内容や程度がどう違ったか分からず,因果関係が認められにくいと言えるかもしれません。

他に,加害者の過失の程度が著しく大きい場合(無謀運転など)や,道路交通法上シートベルトの装着義務が免除される場合(疾病などのため装着が療養上適当でない者や,著しい肥満などにより装着ができない者)も,過失相殺が否定される可能性が高いと考えられます。

つまり,損害賠償額が減らされない可能性が高いということです。

過失相殺がされるケースと過失割合

逆に,そのような事情がなければ,シートベルトの不装着は,原則として過失相殺されます。

その場合の過失割合は,助手席で5~20%,後部座席で5~10%とする裁判例が多いそうです。

つまり,その分だけ損害賠償額が減らされるということです。

この過失割合の違いは,後部座席でのシートベルト着用は助手席ほど進んでいないことが影響しているのかもしれません。

まとめ

シートベルトの不装着の違反点数は,運転者に加点されます。それも運転者に対して迷惑をかけるので良くないことですが,さらに事故に遭った場合は,まさに自分の問題になります。

シートベルトを装着しているときと比べて危険が増しますし,損害賠償額が減らされるリスクもあるわけです。

助手席はもちろん,後部座席でも,しっかりとシートベルトを締めて乗車してください。

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