※こちらの内容は東日本大震災発災後の平成23年時点で作成したものであり、その後の制度の改変等により、現在は必ずしも妥当しない部分があることをお断りいたします。

被災者支援に関する各種制度の概要

大規模災害時には、税金の減免や、教育費の補助などの、各種の経済・生活面での支援制度があります。内閣府のウェブサイトに詳細がありますのでご覧ください。
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/pdf/kakusyuseido_tsuujou.pdf

飲食店に勤務していますが、お店が被災しました。建物は無事でしたが、電気・ガスが復旧しない、食材も入ってこないという理由で1か月ほど閉店しました。会社から、休業した間の給与は支払わないと言われましたが、給料はもらえないのでしょうか。

まず、会社の就業規則などで、不可抗力による休業の場合でも給与を支払うとの定めがあれば給与がもらえますので、そのような定めがないか確認してみてください。

そのような定めがない場合、せめて休業手当がもらえないかが問題になります。

休業が「使用者の責めに帰すべき事由」によるものである場合、使用者(会社)は平均賃金の6割以上の休業手当を払わなければなりません。

今回の震災のような天変地異による休業では、基本的に「使用者の責めに帰すべき事由」は認められにくいでしょう。

しかし、本当はすぐに営業再開できたのに、会社の怠慢で再開が遅れたような場合は別です。1か月もの休業がやむを得ないことだったのか、検討してみる余地があるでしょう。

また、「使用者の責めに帰すべき事由」のない休業でも、自発的に休業手当を払ってくれる会社はあります。会社は休業手当を支払っても、国から最大で8割の助成金をもらえるので、負担は軽くなります。会社に再考してもらえないか、かけあってみてください。

津波で働いていた工場が流されました。社長や工場長とも連絡が取れません。このままでは給料ももらえないし、かといってクビになったわけでもないので、失業保険ももらえないのでしょうか。

失業給付を受けることはできます。

災害によって事業所が休止・廃止して休業を余儀なくされ、給料を受け取ることができなくなった方は、実際に退職していなくても失業給付を受けることができます。

ただし、この特例を受けると、それまでの雇用保険の掛け金日数がリセットされます。

そのため、後日復職または就職し、その後再び失業したとき、失業給付が受けられなかったり、給付が薄くなったりするおそれがありますので、ご注意ください。

この特例を受けるには、雇用保険に6か月以上加入している必要があります。

また、会社からハローワークに休業証明書を提出してもらい、休業票を発行してもらってハローワークに行く必要がありますが、あなたのような事情では休業票を発行してもらえないのは仕方ないことですので、ハローワークで相談してみてください。

印刷工場に勤めていますが、震災によって印刷機械が大破し、仕事にならなくなりました。社長は、「被災企業向けの融資を受けて機械を調達し、必ず操業を再開する。それまで一時的に会社を辞めてもらいたい」と言っています。社長の話に応じたいと思いますが、その間収入がないと不安です。どうしたらよいでしょうか。

失業給付を受けることが考えられます。

事業再開後の再雇用が予定されているのであれば、「失業」とは言えず、本来失業給付は受けられません。

しかし、災害によって事業が休止・廃止して一時的な離職を余議なくされた場合は、特例として失業給付を受給できます。

ただし、この特例を受けるには、雇用保険に6か月以上加入している必要があります。

また、この特例を受けると、それまでの雇用保険の掛け金日数がリセットされます。

そのため、後日復職または就職し、その後再び失業したとき、失業給付が受けられなかったり、給付が薄くなったりするおそれがありますので、ご注意ください。

震災の影響で、私が勤務している会社の売上が激減しました。会社は従業員100名のうち30名を解雇すると発表し、私もその中に入ってしまいました。解雇を受け入れないといけませんか。

会社は人件費削減のために安易に従業員を解雇することはできません。

以下の「整理解雇の4要件」を満たさない限り、解雇は無効となります。

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力の履践
  3. 解雇手続の相当性(労働者や労働組合と十分話し合ったかなど)
  4. 解雇対象者の人選の合理性

このように整理解雇が厳しく制限されることは、震災の場合も変わりません。

これら4要件を満たす解雇か、ご自分でもよく検討し、会社と話し合い、疑問があれば弁護士などの専門家に相談してください。

震災の影響で、会社の売上が激減しました。私は契約期間1年の契約社員で、あと1か月で契約期間が満了するのですが、次の更新はしないと言われています。このまま会社を辞めなければいけませんか。

期間の定めのある労働契約は、期間満了により終了するのが原則です。

しかし、これまで何度も契約が更新されており、雇用が継続することについて合理的な期待がある場合は、解雇の場合と同じように、会社側に客観的で合理的な理由がない限り、契約を更新しないこと(雇止め)はできません。

この場合、前の質問でお答えした、整理解雇の4要件を当てはめ、雇止めの有効性を厳しく吟味する必要があります。

震災直後、1週間の自宅待機を命じられました。現在は通常どおり出勤していますが、自宅待機した1週間分の給料は払わないと会社から言われました。もらうことはできないのでしょうか

本当に自宅に待機しているよう命じられたのであれば、給料は発生します。

しかし、会社が被災して営業を休止している場合などは、仮に「自宅待機」という言葉が使われたとしても、実際は出勤してくれるなというだけで、その間の行動を制約していない(必ずしも自宅にいなくてもよい)ことも多いと思います。

そのような場合は、自宅待機命令ではなく、休業にあたります。

もしも休業であるならば、当然に給料が発生するわけではなく、無給となる場合や、休業手当の支給のみとなる場合があります。

私はある会社から採用内定をもらっていたのですが、その会社が震災で被災して、内定を取り消すという通知を送ってきました。私は働くことができないのですか。

内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当とみなされるかどうかによります。

会社の被害の程度が大きく、新規の雇用が難しいような経営状態に陥っていれば、内定取消しは認められるでしょう。

逆に、被害の程度はそれほどでもなく、震災を口実にしているだけであれば、内定取消しは認められません。

私は登録型派遣の派遣社員ですが、派遣先が被災しました。派遣先は営業再開のめどが立たないため、派遣元との間の派遣契約を解約しました。私の今後の仕事と給料はどうなるのでしょうか。

派遣先・派遣元間の契約が解約されても、あなたと派遣元との契約が終了するわけではありません。

したがって、契約期間満了までは、新しい派遣先への派遣を命じられることがある半面、給料の支払いを受ける権利があります。

もっとも、新たな派遣先が決まらず、その間休業を命じられた場合は、給料は発生しません。

しかし、その場合も、通常は、休業手当(平均賃金の6割相当)を受給する権利があります。


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