不動産を巡る法律問題は尽きません。
比較的身近で典型的な問題について不動産オーナーのあなた向けに説明します。
1. 賃貸物件の明渡請求
賃貸物件の入居者が賃料を滞納することがあります。何とか支払ってくれれば一番ですが,何か月も滞納している人だと,そのまま延滞を重ねたり,少し払ってはまた溜めてといった具合を繰り返したりして,長期的には滞納額を膨らませる結果になることが少なくありません。
オーナーとしては,どこかのタイミングで,賃貸借契約を解除し,明け渡しを求めることを考えないといけません。
明け渡しを求める場合,通常は,内容証明郵便で,
- 未払賃料の支払いを催告するとともに
- 支払わないのであれば契約を解除するとの意思を表示し
- それでも支払われなければ訴訟を提起します
また,せっかく勝訴判決を得ても,占有者が変わっていると明渡しの強制執行ができませんので,不特定多数の者が出入りしているなど,占有者を変えられるおそれがある場合は,先行して占有移転禁止の仮処分を申し立てておくことが重要です。
2. 賃料増減額請求
賃貸人は,土地もしくは建物に対する租税の他の負担の増加,土地もしくは建物の価格の上昇その他の経済事情の変動,近隣の建物の家賃との比較などにより,家賃が不相当に安くなったときは,賃借人に対し家賃の増額を請求できます。
逆に,賃借人は,家賃が不相当に高くなったときは,賃貸人に対し家賃の減額を請求できます。
賃料の増額または減額は,当事者が合意すればそのとおり変更できますが,合意に達しないときは,最終的には裁判所の判決によって相当賃料を決めてもらうことができます(通常は,判決の資料とするため,鑑定が実施されます)。
もっとも,いきなり訴訟提起することはできず,その前に調停を申し立て,調停の席での話合いを試みることとなっています。
3. 欠陥住宅
ひび割れ,きしみ,雨漏り,防音不良,耐震不良・・・。
完成した住宅が,建築基準法などの法令に違反する場合はもちろん,契約内容に照らしても通常備えるべき性能を有していない場合は,瑕疵担保責任の追及が考えられます。
瑕疵担保責任は,契約が売買でも請負でも,無過失責任です。
平成12年4月1日以降に契約した新築住宅の瑕疵担保責任については,住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が適用されます。
品確法が適用されるか否かで,瑕疵担保責任の内容は以下のように変わってきます。
1.品確法の適用がない契約
1) 売買契約の場合-売主の瑕疵担保責任
買主は損害賠償請求ができますし,契約の目的を達することができない重大な瑕疵の場合は契約解除もできます。
他方,請負と違い,特約がない限り瑕疵修補請求はできません。
担保責任の期間は,事実を知ってから1年以内です。もっとも,宅建業者から購入する場合,この期間が引渡しから2年などと限定されていることがほとんどです(引渡しから2年未満とすることは宅建業法で禁じられています)。
2) 請負契約の場合-請負人の瑕疵担保責任
注文者は瑕疵修補の請求ができますし,損害賠償請求もできます。
他方,建物建築については,どんなに瑕疵が重大でも契約解除はできません(瑕疵が重大で建て替えが必要な場合,その費用を損害賠償請求します)。
担保責任の期間は,石造・コンクリート造・金属造等の場合は引渡しから10年,それ以外の普通工作物の場合は引渡しから5年ですが,実際は特約によって短縮されているのがほとんどです。
また,瑕疵により建物が滅失または損傷した場合,そのときから1年以内に権利行使しなければいけません。
2.品確法の適用がある契約
売買でも請負でも,瑕疵担保期間は引渡し後10年間とされます(これを短縮する特約は無効です)。また,請負の場合だけでなく,売買の場合でも,瑕疵修補請求ができます。
ただし,品確法の対象となるのは以下の部分の瑕疵に限られますので,それ以外の瑕疵については,上記1のルール(品確法の適用がない契約)に従います。
1) 住宅の基礎,基礎ぐい,壁,柱,小屋組,土台,斜材,床版,屋根版又は横架材(戸建て住宅における「骨組」,マンションにおける「躯体部分」)
2) 住宅の屋根もしくは外壁またはこれらの開口部に設ける戸,わくその他の建具,雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち,当該住宅の屋根もしくは外壁の内部または屋内にある部分
瑕疵担保での責任追及が困難でも,不法行為や債務不履行で責任追及できる場合があります。
また,売主または請負人以外の関係者(仲介業者,設計者,施工者,監理者など)に対しても,不法行為や債務不履行で責任追及できる場合があります。
境界問題
「お宅の塀が越境してきている」
「いや,境界はここまでだから,越境していない」
このような境界を巡る紛争は珍しくありません。
土地の境界には,筆界(登記された土地の範囲を示す公法上の境界)と所有権界(土地所有権の範囲を示す私法上の境界)があります。筆界と所有権界は,通常は一致していますが,土地の一部の譲渡や取得時効などによって不一致となっていることもあります。
所有権界については,当事者の合意で決定することができますので,まずは話合いによる解決を図ります。話合いがまとまらなければ,簡易裁判所の調停や,弁護士会・土地家屋調査士会などのADRを利用することもできますが,どうしてもまとまらない場合は,所有権確認の訴訟によって解決することになります。
他方,筆界については,当事者(私人)が勝手に決めることはできませんので,これを確定しようとすれば,最終的には筆界確定訴訟を起こし,裁判所の判決によって確定してもらうほかありません。
もっとも,判決のように確定力はないものの,法務局の筆界特定登記官によって筆界を特定してもらう筆界特定制度という手続もあります。
証拠(法務局備え置きの地図・公図,現地の境界標など)が十分でない事案や,筆界が確定ないし特定されればそれを参考にした所有権界の合意が得られそうな事案であれば,筆界確定訴訟や筆界特定制度の利用も考えられます。
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上記のような賃貸物件の明渡請求,賃料増減額請求,欠陥住宅,境界問題などでお困りの不動産オーナーの方は,お気軽にご相談ください。
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